赤く染まる夜の西安、現代に残る唐文化-中国陝西省西安市

西安の夜は昼より美しいという人がいる。夜、いたるところで目にする灯籠がこの街を明るく、真っ赤に染め、街には無限の生命力が宿る。西安の夜は一色の色で表すことができる。つまり、赤だ。賑やかさの赤、長久の赤、そして千年前の唐の情景そのままの赤だ。西安の赤は、単にこれまで街の活力を表現してきただけではない。この街が受け継いでいる昔日盛世の遺伝子でもあり、ひとつの民族にとっての未来の情景でもあるのだ。

写真|Forest Lin


赤、それは西安の底色

いったいいつから西安人気に再び火が付いたのだろう。もしかしたら、この間、「大唐不夜城」のショーに「不倒翁姐姐」が登場するようになったときからかもしれない。この唐朝の仕女は目を潤わせながらゆらゆらと体を揺らし、花柄の団扇を振りながら、蘭の花のように指を反らせる。その様子が目に入った観光客は思わず拍手をしたあと、まだ冷めやらぬ頭のまま、ぼおっと通り過ぎてしまうのだ。

写真|小紅栗子満地跑

もし西安でいちばん「長安」の面影を残す場所をお探しなら、それは「大唐不夜城」だ。ここの敷地の中心線に立って両側の爛々と輝く灯籠を眺めると、まるで夢の中で元宵節の花火や灯籠を見ているようだ。実は、唐の時代、一年を通して夜間の外出は禁止されていた。なので、「明かりの山が帝都を満たす」光景は、ただ元宵節の3日間の夜にしか見ることができなかった。一方西安では、大唐不夜城は「現実の元宵節」である。めでたさの赤と喜びの赤を以て賑わいを打ち消す。そうして西安が眠りに就いたとき、長安が真に赤く染まるのである。

写真|穿越雲天

西安が眠りにつく頃、長安が再び蘇ってくる

西安のすべてが静まり返ると、古い城壁が蘇り、街中の器物、城下の俑にすら生命が宿る。こんなにも完全な古い城壁を現在の西安で見ることができるなんて――そしてそれらがすべての人々の日常生活の一部だなんて――誰が考えるだろうか。鶴のような白髪の彼の顔は血色よくつやつやしており、まるで子どものようだ。それは微動だにせず佇む西安の街の姿なのである。

写真|大菊在路上 写真|路-見

西安ではすべての景観区が博物館のようなものだ。私たちはそこで正真正銘の歴史との対話をすることができる。兵馬俑を見るまさにそのとき、六千人の軍隊があなたの目に飛び込む。戦士一人ひとりの表情は、古くから変わることない。しかし彼らに近づいて見てみると、彼らのひとりひとりがそれぞれ固有の感情を抱いていることに気づくだろう。あるとき、ひとりのカメラマンが俑を撮影して回っていた。ふとシャッターから眼を上げると、俑の顔の上に残された一片の指紋に気づいた。なんとそれは約2200年前、兵馬俑を作った職人が残したものだった。その瞬間、時間は消失し、職人が立ち去ったばかりの同じ場所にカメラマンがやってきたのである。言うなれば、西安ではみなカメラマンのようなものであり、西安での生活の一秒は長安での一秒として感じることができるのだ。

写真|水杉 写真|大菊在路上

西安が目を覚まし、より賑やかで豊かな生活が始まる

賑わい栄える長安の夢から覚めると、目の前に姿を現すのは出来立てホカホカの西安である。秋、日を追うごとに少しずつ涼しく、そして寒くなっていく朝。店や屋台のボイラーからはすでに熱気が濛々と立ち上っている。「スープ一杯、団子多めね」。胡辣湯を頼むと、お店の人がスープの上に色も香りも鮮やかな熱々の油をかけてくれる。少しピリつく舌が新しい一日の始まりを告げている。

写真|Milkybean  写真|学文映像

毎週木曜日と日曜日になると西安城内の西倉定期市が開かれる。ひとつひとつのブースが隣り合う市場には、草木や鳥・魚・虫、衣服・日用百貨、古い本、絵画、新聞、玉や宝石、各種器具など、中古品が並ぶ。靴修理や床屋、雑技などの姿も見える。その隣の城壁の下や環城公園には、これまた賑わいを見せる光景がある。健康家のおじいさんたちがその非常に鍛え上げられた技術で、鉄棒や平行棒で飛んだり回ったりしているのだ。空中で足を抱えてぐるっと一回転して、また両手で鉄棒に掴まる。西安のおじいさんたちは、この街と同じく、激動の世の中の変化を経ながらも、その風采も技も今が盛りのようだ。

写真|穿越雲天

夜七時、店の前では肉夾饃を買う人たちがすでに長い列を作っている。中にぎっしりと挟まれた餡のせいで饃からは今にも肉がこぼれだしそうだ。一口齧れば最高に満足できる一品だ。さらに前へ前へと歩きながら街の灯篭を眺めると、思わず火晶柿子を食べたくなる。西安名物であるこの柿は、ストローを刺して一口吸えば、口中に甘い蜜が広がる。汁を吸い出されてクシャっと潰れてしまったあとは皮を剥いて果肉を食べよう。夜がもうすこし深くなると、待ってましたとばかりに若者たちが続々とナイトライフを開始するので、彼らと一緒にお祭り騒ぎのなかでぼんやりと楽しもう。友達を何人か、あたりの焼肉や撸串(串焼き)に呼び出して集まってもいい。そしてさすがに疲れ果てた頃、人々はいちばん深い夜の景色に眠り、夢で再び長安へと帰っていくのだ。

 写真|Milkybean

四角い西安の古城壁がその中の現代都市をしっかりと守っている。高いところから俯瞰すれば、それはまるで「国」という字にそっくりだ。西安に立つということは、長安に立つことであり、唐の帝都に立つということである。西安の夜、時空を超えて、筆にたっぷりと墨をつけて書画を書けば、在りし日の大唐帝国をありありと感じ、さらには栄え賑わう未来の様子を期待してしまうのだ。

—「物道」より









 





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