水の入ったバケツ、カラフルな絵の具、そして中国風の扇子が風に舞っている……最近、漆扇が中国の多くの景勝地やフリーマーケットで見られる。
漆扇にはさまざまな題材や文様があり、よくあるのは風景、花鳥、人物などで、目を楽しませてくれる。漆扇の製作工程は複雑で、さまざまな技法が必要のため、一般の人が使いこなすのは難しい。私たちが普段目にするのは、無形文化遺産である漆芸の「漂漆」技法を用いたシンプルな漆扇である。
中国では漆で絵を描くことには長い歴史がある。漆は、漆の木から切り出される乳白色の天然液体塗料で、加工することでさまざまな色を作り出すことができる。中国は世界で初めて漆器を発明し、使用した国でもある。
漂漆、漂流漆とも呼ばれる。漆にテレビン油やオレンジ油を加えて薄め、浮遊性があるため、垂らしたり、はじいたり、投げたりして、さまざまな色の漆を水面に浮かべる。ペンで水を軽く引っ掻くことで、流れる模様を生み出し、扇子を水の中に入れて染め、乾燥させると、漂漆製品が完成する。中国風の色合い、ユニークな図案、美しくてすごく魅力的である。
厳密な意味では、漆扇自体は無形文化遺産ではなく、全国各地で伝承されているラッカー製作技法こそが無形文化遺産である。漆扇は、漆芸の「残材」で作られた現代的な小物のようだが、この残材だけで十分きれいだ。
漆扇の大ヒットは、今春の揚州観光ブームに端を発している。揚州の中国大運河博物館では、国家級無形文化遺産である揚州漆器髹飾の技法を広めるため、館内に漆扇体験を設置し、多くの若者の注目を集めている。
目まぐるしい時代だからこそ、ゆっくりと漆扇を作って、静けさと優雅さを感じよう!
筆者:青葉