人々は南京にどんな印象を抱いているだろうか。六朝の古都、新街口のにぎわうビジネス街、美しい紫金山、人文の雰囲気濃厚な孔子廟などなど、この街にはじっくり味わう価値ありの場所がとても多くある。しかし、そんなきらびやかに光り輝く場所から一歩離れてみると、歴史がこの街に注いできた濃厚な気持ちや、安らかな生活がこの土地に向ける穏やかな眼差しに気づく。そしてそれはこの街を好きになり、長いこと忘れられなくするのに十分な力を持っているのだ。
動物ショーを廃止した紅山森林動物園
早朝、ここではお年寄りたちが園内の道をぐるぐると回りながら体を鍛えている。週末、ここには子どもを連れたお父さんお母さんたちが動物たちとのデートにやってくる。季節の変わり目には、紅山は子どもたちにとって野山遊びのうってつけの場所にもなる。紅山森林動物園は2011年に動物ショーを、2014年には客のエサやりを廃止した。動物の自然性を回復し、動物にとって自由な住処を実現するためだ。このような動物たちへの心が行き届いた温かな取り組みによって、今では以前より多くの若者たちが紅山に惹かれ、足を運んでいる。
ここは温かな国であり家である。スタッフたちは動物たち一匹一匹のため、それぞれ紹介用プレートを作っている。たとえば、ウサギの毛を抜くのは大好きだが食べるのが嫌いなトラには「奇妙」、過去に群れの「女帝」オオカミの恨みを買ってしまい現在は注意深く生活を送っている雌オオカミには「小黒」、思わずスタンプにしたくなる表情をバリエーション豊かに見せてくれるワオキツネザルには「雲宝」などだ。
園内の各エリアは動物たちの習性によって設計が異なっている。それにより動物たちの生活をより快適にするだけでなく、お客さんたちに動物たちの生息環境をありありと身体で感じてもらうことができるのだ。たとえば、穴掘りが好きなミーアキャットには直立して遠くを眺め見張りをする習性がある。園側はミーアキャットの生活エリアの中央にピラミッド型のガラス製観察ルームを設け、それを外部と天井の低いトンネルで繋げた。お客さんたちはこのトンネルをまるで「穴掘り」するように抜けたあと、観察ルームで「見張り」に立つ。こうすることで、ミーアキャットたちが穴掘りしたり見張りに立ったりする様子を彼らの生活のど真ん中で観察することができるのだ。
園側はさらに工夫を凝らし、園内に空中通路を設けた。するとトラたちはこの通路を通ってそれぞれのエリアの間を移動できるし、さらにお客さんたちは大型肉食動物に高所から見下ろされる感覚を味わうことができるのだ。
「主人は動物、お客さんはゲスト」という理念を堅持する紅山動物園では、動物たちは「見られない権利」が保障されている。彼らは今、自宅でゆっくりくつろいでいるのであり、たとえ彼らがあなたをないからといって、ここでは恨み言を言ってはいけないのだ。心から大好きな動物が見られなかったときには、そのことをぜひご理解いただきたい。
旧建築のなかで生まれた文芸通り――小西湖
南京のシンボル老城南は南京人にとって懐かしい存在でもある。小西湖街区はそんな城南物語の新たな続編だ。改造を経た小西湖街区は伝統的な古い町並みの空間レイアウトや質感を保つと同時に、新時代の文芸の息吹を注入している場所だ。
青レンガと赤瓦のコーヒー店、中国文化と西洋文化が融合したブランチの店、または書店と芸術が結びついた花迹・虫文館……どれも若者にとって絶好の華やかなお出かけスポットになっている。とはいえ、これらのお店の人気も城南独特の人文が持つ魅力の加護なしにはありえない。伝統と現代のコンビネーションが今ある独特の雰囲気を作り出しているのだ。
旧建築そのものに金銭を超える価値がある。街の記憶であるこれらをいかに残していくかこそが、改修改造の意義となる。好奇心に目を光らせた観光客たち、そしてそのような観光客たちの姿を当たり前のものとして受け止めるようになったより多くの住民たちでこの通りは満ちている。彼らは互いに目礼を交わしながらそれぞれのやるべきことをこなしている。
時の旅――下関火車主題公園
長江に近い南京老江口の鉄道連絡船桟橋跡地には、汽車をテーマにした公園――下関火車主題公園がある。この汽車のテーマパークは、南は鉄道連絡船桟橋跡地、北は南京長江大橋に面していて、蒸気機関車が置かれている。かつて客車を引いた機関車は、今ではいったいどれほどの南京人の記憶を乗せているのだろうか。
南京鉄道連絡船桟橋跡地は南京市鼓楼区下関地区に位置する。中国初の鉄道フェリーであり、長江の南北街道の要衝である。アジア初の鉄道フェリーでもあり、かつて1927年から1937年の10年間には中国十大工程の一つにも選ばれていた。ある日本の記者は『読売新聞』の紙上で「華麗であり立派、東アジアの無双の存在だ」と称賛している。
公園は大きいとは言えないが、蒸気機関車、昔ながらの中国鉄道客車「緑皮車」が3両、そして旧式鉄道駅の待合室を模倣して構成された、小さいながらも精巧なレトロ空間が設けられている。ここでは民国時代の好きな衣服を着て、時代の息吹を感じる写真を撮影することも可能だ。ほかにも、車両を改造して作ったカフェの中で静かに思い出に浸ったり、長江の畔をゆっくりと散歩して沈みゆく夕日のなかで風を浴びたりするのもいいだろう。
寄稿者:江蘇観光(日本)ピーアールセンター