中国の絶景が見せてくれるカラフルな景色

あなたは白い崖を見たことがあるだろうか。純白なその崖は、どれだけ頭をもたげても全景を視野に捉えることができない。崖下には深い湖が横たわっている。ここ中国青海省にあるその崖に人々は耳触りの良い名を付けた。塩崖である。「塩崖」は岩塩鉱が堆積して形成されている。これが人を酔わせる白さの原因である。ここに立てば、世界の果てはこんなふうなのだろうと、おもわず頭に浮かんでしまう。

ひっそりとしていて、とっつきにくく、荒涼としている……多くの人の心の中で青海のイメージはそんなところだろう。しかしそのほとんどは青海に対する最大の誤解である。というのも、中国の母なる二大河川である黄河と長江はどちらもここを源としているのだ。たしかに、ここには他には類を見ないほど荒涼としたゴビ砂漠が広がっていて、訪れた人々は千里の孤独とは真にどのようなものであるか会得するだろう。しかし同時に、ここではエメラルドグリーンの黄河が青蔵高原と黄土高原の境となる山々の頂から生命の息吹を発散しながら流れているのだ。ほかにも、この土地の色づいた雲が渦を巻くように流れていく様は見る者の心を癒してくれるし、断崖絶壁には人の魂を強く揺さぶる力がある。

【青】遥か遠くに姿を見せる、幻想的な美しさ

青海と聞いて思い浮かぶのは青だろう。あちらこちらに星のように散らばっている何百何千という塩湖の数々、その中の少なくともひとつはあなたの心を惹きつけるはずだ。

まるで鏡のようにして四方に散らばるのは茫崖翡翠湖である。その色は澄み渡っており美しい。淡いブルー、エメラルドグリーン、そして深い緑が、湖水をゴビ砂漠という台座に嵌められたヒスイのように見せ、漢の使者張騫も立ち寄ったことがあるシルクロードの宿駅に一抹の水の優しさを添えている。

「神様の涙」という美しいあだ名を持つ大柴旦翡翠湖は、雪山高原の中にそっと隠れている。その湖水は陽光の差し加減によってそれぞれ違った輝きを見せる。湖畔に立つと、鏡のような湖面に空全体が倒立して映る。まるで仙境のようだ。

青海には世界でここにしかない水上ヤルダンも隠されている。広大で果てがないゴビ砂漠の中でありながら、ここには水の音がさらさらと響き、生気が満ちている。まるで時間と空間の束縛を超えて異星の世界を訪れたような気分にさせてくれる、そんなこの上なく不思議な場所である。

2色の色から成る湖を目にしたことがあるだろうか。西タイジナール湖(漢字表記:西台吉乃爾湖)は湖上を走る一本の道路で二分されている。片方の湖水はブルー、もう片方はグリーンである。高いところから湖を俯瞰すれば、まるで巨大な「おしどり鍋」のようだ。見る者を震撼させる絶景である。

【赤】広々とした深い静けさの中で、激しく咲き誇る

翡翠湖は「神様の涙」だが、艾肯泉は「悪魔の涙」である。ここでは褐色の泉眼が多種多様な美色で縁どられている。赤、金、オレンジ……その様子はまるで巨大なパレットを泉の中に落としてしまったかのようだ。艾肯泉と翡翠湖の「一青一紅」は、その一対の眼で、この神秘なる土地を日夜守っているのである。

艾肯泉と優劣を競えるのは紅河谷をおいてほかにない。赤褐色の河床が広がり、水の流れが削りとった痕跡が確認できる。痕跡の太さや密度は一つとして同じものはなく、見る者を飽きさせない。まるで解剖図の血管と毛細血管のようなここは、人々から大地の血脈と呼ばれているのも納得の場所である。

ほかにも、青海には千佛崖がある。泥塑崖刻は雨水の侵食と風食で削られたものであり、壮大な「千佛斉聚」を形成している。遠くから眺めると、その様子はまるで迫力満点の赤い滝が崖の上から流れ落ちているようで、壮観だ。

大自然が作り上げた色だけではない。青海の赤には信仰の赤もある。塔爾寺を参拝するチベット民族の多くは遠くあちらこちらからやってきた人々である。彼らはまるで自らの身体で大地を測るかように五体投地を繰り返しつつ、心の中の神に向かって這って進むのである。

【藍色】人を癒す、純情な、そっと滲み出る魅力

チャカ塩湖と青海湖が隔て合うここでは、この時代のものとは思えないような美しさを目にすることができる。純粋な白と、湖面にくっきりと映る倒影、遠くの雪山、そして深い藍色の空が溶け合って、ひとつの光景を作っている。きらきらと澄んだ塩湖では青と白が混じり、夢の世界のようだ。白い砂浜のような東タイジナール湖(漢字表記:東台吉乃爾湖)は限りなく広がっている。湖面に船を浮かべると空中を散歩している気分になる。青い空と白い雲が互いを引き立て合う、まるで仙郷である。

青海湖の藍色は深い。海のように広い湖面はまるで連山の間に敷かれた巨大なシルクである。太陽の光が降り注ぐと、湖面は小さなダイヤモンドを散りばめた絹織物となり、目を奪う。

【黄色】明るく色鮮やかで、落ち着きはらった美しい世界

余所より少し遅く花を咲かせる門源の菜の花は、7月になると何百キロにもわたって延々と咲き誇り、まるで金色の海のようである。

夕方、「天に通じる」国道G315を行くと、血のように真っ赤な夕日が先に立って道案内を務めてくれる。このような孤独と静けさだけが、本当のあなたを心ゆくまで解放してくれるのである。

硫黄湖は青海唯一の黄色い塩湖である。まだ磨き削られていない黄色い宝石のようにしてヤルダン地形の褶曲に横たわるこの湖は、翡翠湖や艾肯泉ほどの名声はないが、それでも見る者の心を掴んで揺さぶるには十分である。

【緑】新しく清らかな生命力を優しく呼び覚ます世界

卓爾山は「小スイス」と呼ばれる。だが、ここはスイスよりも優しい。早朝、朝焼けの雲がゆらゆらと立ち上る。ときおり微風が掠めると、朝霧がじわじわと流れ、遠くの家が見え隠れする。その様子はまるで空から降ってきたかのような光景である。

年宝玉は多くの人の心に残された「最後の清浄の地」である。この地に数日滞在すれば、きっと心が清らかになることだろう。

大自然はこの土地にあらゆる色をもたらした。全ての色にそれぞれの詩があり、全ての色は私たちに最も原始的な感動を与えてくれる。全ての色は大自然の偏愛の表れである。青海を訪れ、自らの魂を解き放ち、心落ち着く先を探してみてはいかがだろうか。

—「環球旅行」より

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