琿春――東北の辺境に満ち溢れる異国情緒

吉林省琿春。ここは中国、ロシア、北朝鮮の3国国境が交わる辺境の街である。勢いよく流れる図們江、北朝鮮の陸地、ロシアの山河、そんな多重風景を一望することができる場所だ。

△画像|琿春では野生動物との出会いはちっとも珍しくない。/図虫

01 「豪快奔放」かつ「保守的」な味わいある異国感

琿春市は延辺朝鮮族自治州東部に位置する。中国で最も早く日の出が見える場所でもある。私が初めて琿春を訪れたとき、この街が与える印象は清潔で温かい東北の小さな町というものだった。しかし、3種類の言語で描かれた標識がいたるところで目につくことから分かるように、ここは包容力ある開放的な土地でもあった。欧式街に足を踏み入れると、東欧風の塑像と建築に囲まれるし、朝鮮村に行けばまた違った土地に入り込んだという感覚に陥る。

△画像|珲春の建築には異国情緒が溢れている。/図虫創意

この2種類の異なる異国情緒は、防川村で一体となっている。

龍虎閣に登り、3カ国を一望してみよう。もし天気が良ければ、図們江に向かって遠方を眺めると、ぼんやりとではあるが広々とした日本海まで見ることができる。朝鮮族の風土や人情を感じてみたい人は、民俗朝鮮村の伝統建築を訪れ、朝鮮族のグルメを食べてみたり、簫の演奏と朝鮮族の代表的な舞踊「象帽」のショーを見てみよう。また、公益パフォーマンスを見たり、毛蟹やナマコを食べたり、琵琶島で野生のオットセイに餌をあげたりしてみるのもいい。最後は朝鮮族の特産品を買えば文句なしだ。 

市街区に戻ろう。ここではいろいろな種類のグルメに触れることができる。串焼肉、温麺・冷麺、スンデ、餅など、朝鮮族のグルメの数々に目が回りそうだ。うなぎの炭火焼やタラバガニなど各種魚介・海鮮も手招きしている。海を飲み干せるほどの胃袋と太ってしまってもいいという覚悟がない限り、おそらくここのグルメをすべて食べ尽くすことは不可能だろう。

△画像|琿春の夜市。/図虫

ロシア商品を専売しているワルジャー記念品商店のなかでいちばん注目なのはロシアの7度ビールだろう。ほかにも正規格品でありながら手頃な価格のウイスキー、ウォッカ、スピリタスなども売られており、酒好きはその場に釘付けになってしまうことだろう。

また、ロシアの大人気商品としてはオホーツク海、ベーリング海の海鮮が外せない。新鮮なタラバガニ、ホタテ、本ミル貝、シロ貝、ホッキ貝、白ミル貝、サザエなど、どれも心奪われる一品だ。

△画像|美味しいタラバガニ

02    風雲変幻の辺境地帯

琿春はその歴史において、かつては経済が発達した国境沿いの辺境地区であった。その地理的位置と天然資源のおかげで、歴史家からは「東洋のバルカン」と呼ばれている。この地には中原文化、満族、朝鮮族などの文化が入れ替わり立ち替わりした。また、琿春には約4000年前の新石器時代からすでに人類が生息繁殖しており、原始社会が構成されていた。

△画像|琿春は地理的に優位な位置にある。/図虫

隋・唐の時代の渤海国はかつて琿春に一世を風靡した八連城を築き、「日本の海のシルクロード」のため専門サービスを提供した。八連城遺跡に立つと、東北アジア国際貿易都市としての当時の繁栄を今でも感じることができる。史料によれば、当時の日本は渤海国へ200年の間に34回、2000人あまりの使者を派遣している。そのため琿春は唐と日本との間の貿易・文化交流の最も重要な橋梁であった。

△画像|図們江に架かる友好の橋/Wiki

03    野生のアムールトラに出会うにうってつけの場所って、ほんと?

異国の風情を感じたりグルメと歴史を楽しんだりする以外にも、森林に向いて、野生動物を見るのもいい体験だ。森林率76.5%の琿春では、自然に最接近して思う存分呼吸するいちばんの方法は徒歩だ。ただし、道端の草木や小動物をいじめたりびっくりさせたりはしないように。

△画像|琿春は風景が美しく、森林率がとても高い。

森といえば、ここには図們江国家森林公園、防川景区、大荒溝村といろいろあるが、しかしそのどれもが特別というには物足りない。というのも、琿春でいちばん人気の景観区は東北虎自然保護区をおいてほかにはないからだ。ここは中国で唯一のアムールトラとアムールヒョウの自然保護区である。

△画像|アムールトラを見るとワクワクとドキドキが同時に味わえる。

もし野生の大型ネコ類が好きなら、動物保護のボランティアを務めてみよう。アムールトラに最接近できるし、完全な生態系を体得する旅行が体験できることだろう。冬には琿春野生動植物保護協会がチームを組み、森に仕掛けられた罠を一掃する活動を行う。これらの密猟具は人の手で解体する必要があるのだ。白樺林を一路抜ける途中にメンバーが、道に沿って隠されている動物たちの痕跡――熊が土の中から蜂の巣を掘り出した跡、キツツキが啄いた木の幹、イノシシやシカの食べ残し、ノロジカのねぐらなど――について紹介しながら説明してくれる。数日歩いただけでも大満足できるはずだ。

ほかの自然旅行愛好者ガム中になるのは渡り鳥かもしれない。春と秋になると、カメラを手にした人々が一団となって敬信湿地や碧藻紅蓮池の畔にやってきて、ヒシクイ、タンチョウヅル、カモ、海鳥、シラサギなど数多くの渡り鳥が開催する一期一会の集いを待ち構える。動物を見るのに疲れ、森林浴でストレス解消をしたいなら、大荒溝村の渓谷景観区に行ってみよう。雪景色の中に広大な混生林が広がって枝葉を揺らしている。風の音と雪を踏む音は最高のASMRだ。

△画像|長白山風景区の環境はとても優美だ。/unplash

琿春では、すべての鳥獣と草木花が尊重されている。そのため、数百年の間みじんも変わらぬ彼らの生活スタイルが保護されて残っていることも少なくない。今度吉林に来るときは、数日ほど時間を作って琿春の広大な大地に足を運んでみよう。そして、三カ国が交わる雰囲気と自然回帰の野趣を感じてみてはいかがだろうか。

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