湖南ビーフン、汁も残らないほどおいしい

嗦粉(スゥオフェン/ビーフンを啜り頬張ること)は、湖南人の幸せの源泉だ。湖南衛視のテレビスタジオから、路地裏の知らないお店まで、ビルが立ち並ぶCBDから、人の波が押し寄せる夜市まで、賑やかな商店街から、閑静な公園まで、麺を啜る人が見える。

湖南人の目には、麺を啜るのは儀式感があることだ。ビーフンは「食べる」のではなく、大きく息を吸って、つるつると「啜る」のである。スープを一口飲み、ビーフンを箸で取り、口に啜り、見た目に気を使わず、啜る音が大きすぎて周りに迷惑をかける心配もない。なにしろ、ビーフンを啜るときは自由気ままが一番だから。

ビーフンを啜るのはすでに湖南人の朝食の血脈に溶け込んでおり、朝にビーフンを啜っていなかったら一日は元気がないようだ。湯粉(スープありビーフン)、炒粉(炒めビーフン)、拌粉(和えビーフン)、各種の調理方法がある。豚肉、牛肉、魚肉、各種の肉類は全部揃っている。さらに卵、野菜、豚骨スープなどを加え、たっぷりお椀に盛り、香りがあふれる。

スープありビーフンはスープ、ビーフンやビーフンにかけるトッピングにこだわっているので、どれも不可欠だ。スープには風味があり、ビーフンは弾力があり、トッピングは香ばしく、そして、湯気が立つスープありビーフンになる。湖南のビーフンを啜るマップも、ほとんどがスープありビーフンに占められている。

長沙肉絲粉(ロースフェン)はスープありビーフンの中のトップだ。スープは豚骨、鶏ガラ、豚肉を徹夜で煮込み、はっきりと「風味がある」「清い」の2大特色を呈している。色は淡白ではあるが、味は極めて鮮美である。ビーフンは平たいビーフンを使っている。平たい微粉はうまみのあるスープと香ばしいトッピングの中に浸され、より味がしみ込みやすい。また、平たいビーフンの口当たりは柔らかく滑らかで、長の人の好みに合っている。

ラード和えビーフンは多くの長沙人が最もよく食べるビーフンで、作り方は簡単だが、味は良い。熱したラードを茹で上がったビーフンにかけ、醤油、塩、唐辛子、落花生を加え、簡単に和えると、香りが直接引き立てられている。長沙人がラード和えビーフンに対する深い感情は、上海人にとってのネギ油まぜそばのように、このような手っ取り早い家庭料理は、食べやすく、人の心も癒される。

常徳ビーフンにはトッピングなしのビーフンとトッピングありのビーフン、この2種類がある。トッピングありのビーフンの中では牛肉トッピングが最も有名である。赤身や脂身がほどよい牛肉をさまざまなスパイスをまぜ、弱火でじっくり煮込むことで、牛肉トッピングの旨味が徹底的に引き立つ。また、常徳ビーフンには定番のスープありビーフンの他に、煮込みビーフン、塩漬けビーフン、炒めビーフンなどもある。

衡陽魚粉は「風味がある」という一言だけで形容できる。これはスープを最もこだわっているビーフンだ。スープを作る前に、豚の膝頭骨を叩き割り、各種の調味料を入れてから、一晩かけて、やっと濃厚で甘味のあるスープを作ることができる。郴州の栖鳳渡魚粉は衡陽魚粉と同じようにスープの出汁に力を入れているが、スープはスパイシーな食味である。

邵陽米粉は米粉の太さと食感にこだわっている。新米と古米を組み合わせて作ったビーフンはより弾力があり、こしがある。煮込んだ出汁はまろやかで味がしっかり付いている。牛肉のひき肉は香ばしい。一口啜ると、口当たりが良く、しっとりとしている。

湘西ビーフンは種類が多く、湖南では独特だ。ひき肉、牛ハチノス 、羊肉、牛肉、豚骨、豚足、ソーセージ、豚大腸、豚角煮、きくらげやロースの炒め、酸菜と薄切り肉の炒め、酸辣ガツなど、いろいろなトッピングがある。時々、特製の酸湯をビーフンにかけることもあり、さらに酸っぱく辛くて食欲をそそる。

醴陵炒めビーフンは醴陵街の朝食と夜市の軽食の絶対的な主役である。強火で油を沸かし、それぞれのおかずと米粉を入れる。火加減の把握が重要だ。火と油の組み合わせは、炒めビーフンという料理をより芸術のように染め上げている。全体の過程は一気通貫である必要があるこそ、炒めビーフンは色、香り、味がそろう。

以上の数種類を除いて、永州、株洲、懐化、湘潭はすべてそれぞれの特徴のあるビーフンがある。したがって、「湖南ビーフン」という言葉は正確にこのビーフンを形容したり要約したりすることはできない。湖南では、1つの町に1つのビーフンと方言があるからであり、ビーフンを啜ることをいうと、湖南の人は真剣だ。

寄稿者:四月_ノート

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