新年の祈り、中国人の骨に刻まれた儀式感

山に登り、鐘を鳴らし、廟会(縁日)に赴き、線香を上げる……春節、それは中国人にとって異郷をさすらう旅人たちが実家に帰り家族団欒を楽しむ時間であり、伝統の民俗文化が中国の大地で輝かしく咲く時間でもある。

願いと祈りの活動は何千年も受け継がれてきた。健康祈願、家内安全、金運円満、そして良縁成就……どんな願い事にせよ、響き渡る鐘音や風に揺れる赤いリボン、あるいは餃子に包むコインには、一人一人の素朴な中国人の美しい生活に対する期待が託されている。新年のお祈りに対する中国各省の人々の敬虔さは変わらない。しかし、その方法はそれぞれ異なっている。

御守りをもらって良縁を願う

浙江省杭州市では、お祈りの人気聖地があり、その御守りで大勢の若者を引きつけている。それは霊隠寺と法喜寺である。黄壁と灰瓦がもたらす静かさが萌え系の御守りの元気さと重なり、これらのお寺の独特な気質を共に醸し出している。

春節といえば、家族全員から「だれか付き合っている人はいないの?」と魂の拷問がされる時期である。そこで、お寺に良縁成就の御守りを出してもらうことが若者たちの努力となる。いくら食べても太らない、合格祈願、活力満々、良縁成就などなど。現在、このような地味な「仏系グッズ」は若者たちが願いを託すためのいちばん可愛い存在になっているのである。

お祈りツアーに申し込もう

遼寧省錦州の青岩寺は由緒のある古い寺で、線香が絶えることない。人々が新年のお祈りのためによく訪れる場所である。「毎日出発しています」「豪華バスをご準備!」「正規の観光ガイドです」……そんな青岩寺参拝専門ツアーのうたい文句を、私たちは東北・華北の多くの地区でよく目にすることができる。

旅行の種類についていろいろ挙げるなら、観光ツアー、ドライブ旅行、短距離旅行、省をまたぐ旅行など言う人がいるが、お祈り旅行という旅行ジャンルについては知らない人が多い。人々はそれぞれの願い事を胸に一緒に旅に出る。彼らはそれぞれ違った身分や立場で違った仕事に携わっているが、その瞬間は同じ敬虔な心を持っているのである。

お祈りの絶好の目的地

五岳のなかで文化的意味が最も豊かなのは泰山である。その名前に込められた「国が太平で民は安らかである」という喜ばしい寓意のおかげで、泰山は人々のお祈りの絶好の目的地になっている。

旧暦元日のたび、泰山では毎年大勢の人がひしめき合い、線香を上げて福を祈る人が途切れない。敬虔さを表すため、多くの人はバスやロープウェーに乗らず、杖一本で一歩一歩山を登ってやってくる。

70度もの傾度の十八盤には1000段以上の階段があり、1キロに満たない全長で垂直高度は400メートルもある。お祈りをしようと参詣者たちがここを一歩一歩上っていくのは、泰山ならではの独特な春節の景観になっている。

中国人はずっと「泰山が安定しているなら、全国各地も平穏無事である」という言葉を信じている。悠久の歴史を持つ泰山の祈祷文化には中華民族の深い精神追求が蓄積されているのだ。

お祈りのときでも食をおろそかにはしない

成都人が新年のお祈りをする場所と言えば、真っ先に挙げられるのは文殊院である。その理由を聞くと、雰囲気は厳かだとかロケーションが絶好であるからとか以外にも、成都人はまたこんなことを教えてくれる。つまり、そこには美味しい食べ物がたくさん集まっているのである。

成都人の日常生活は文殊院とは離れなく、荘厳な建物もあれば暖かい人間味もある。一年を通してお年寄りたちが文殊院の中にある東屋に集まり、新聞を読んだり家庭生活の話をしたりしている。文殊院の精進料理館には次々とお客さんが訪れる。また、文殊坊軽食街の宮廷桃酥(中国クッキー)、龍抄手(ワンタンの一種)、鐘水餃も成都軽食界で輝くスターである。

文珠院の一般的な参拝の流れは、お線香を上げて願い事をし、列に並んで「福」に触るというものであるが、成都人にとって、は毎年行列に並んで臘八粥(旧暦の12月8日に食べるお粥)を一碗食べることも、文殊院との一期一会の縁になっている。文殊院はお祈りをする聖地であるだけではなく、昔ながらの成都の人々の記憶を記録している大切な土地でもあるのである。 

伝統のお祈りマスコット

長い耳、三つ口、そして赤い長衣を羽織って威風堂々とした兔児爺(トゥーアルイェ)の泥塑(泥人形)は、昔ながらの北京人にとって健康と平穏無事を祈るための大切なマスコットである。

このような伝説がある。昔々、北京で疫病が発生した。そこで嫦娥は人々の病気を直して救うために玉兎を下界に派遣した。玉兎は各種の霊獣に乗って四九城を歩き回り、行く先々では病気が一瞬で消えたという。その感謝を表すために、北京人は玉兎のことを兔児爺と尊称しているのである。

無形文化遺産である兎児爺は、北京人が願いを託す瑞祥のアイテムであり、その愛らしい形により新世代の民俗全体から愛されるものとなった。

中国の大地を見渡すと、各地にはそれぞれ異なった伝統風習が存在する。機会があれば中国に来体験してみてはいかがだろうか。

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