天津、茶館を覗くと常に人々の声が沸き立っているこの街は、市井の息吹に富んでいるうえに「万国建築博物館」という美称も持ち、現代化された一面も持つ、深く掘り下げてみる価値がある街だ。今回は天津に行けば何ができるのかについてお話ししながら、ここでは新旧の文化がいかに完璧に溶け合っているかについても、ついでに見てみよう。
普通、天津に行くなら、五大道、イタリア風情街、古文化街などは一つでも欠くことはできない必見スポットだ。しかし今回はそれらのスポットをお勧めすることはしない。以下に紹介するのは、街をのんびりぶらりと歩くためのガイドである。
早起きして煎餅果子のセットを食べよう
狗不理の饅頭はいちばん有名な天津グルメの一つではあるが、朝食に狗不理を食べる地元天津人はとても少ない。天津に来たなら、ぜひ本場の天津煎餅果子を味わってみよう。これこそ正真正銘天津の朝ごはんなのだ。
天津煎餅果子の皮の原材料はリョクトウから作った粉である。そこに牛や羊の骨を煮込んでとった澄んだ出汁を入れて混ぜ、卵と一緒に薄く伸ばして焼く。こうしてできた煎餅(日本の煎餅とは違い、薄く弾力があるクレープのようなもの)は、香りが香ばしく、歯ごたえがある。この煎餅で巻く具としては、油条(中国風揚げパン)と脆餅(小麦粉で作ったサクサクとした食べ物)しかない。油条の口当たりはふっくらと柔らかく、脆餅はサクッとしている。最後に煎餅に薄く甜麺醤、腐乳醤、そして唐辛子を塗り、巻いたら出来上がりである。重要なのは、受け取ったら熱いうちに急いで食べるということだ。
美味しい煎餅を出す屋台は一般的に古くからの集合住宅街のあたりにある。たとえば、営道口と宝鶏東道の交差点にある老金煎餅や、衛津路と鞍山道の交差点一帯に店を出している二嫂子煎餅果子、紅姐煎餅果子、津老味煎餅果子などだ。
西湖道のグルメ街をぶらつこう
ひょっとしたら外からやってきた観光客の人たちは西湖道という名をほとんど聞いたことがないかもしれないが、ここは当地の食いしんぼうたちが集まる場所だ。天津最長のグルメ街のひとつでもある。西湖道は朝から晩までとても賑わっていて、店先には串がずらりと並んでいる。多くの店は列に並ばないと買うことができない。西湖道の餡餅、棗糕、老味巻圏、火神妙老城里钙奶湯圓など、どれも一人あたり十数元を超えないのに、やみつきになる美味しさだ。
/平湖炸糕/
もち米と小麦粉からできた皮で、小豆と黒糖を炒って作った餡を包み、それをその場で揚げて提供する。熱いうちに一口頬張ると、外の皮はさくさくと柔らかく、中の餡は飽きがこない甘さで、小豆の粒感も楽しめる。甘いもの好きにおすすめだ。
/栄真斋老味巻圏/
巻圏も天津の朝食の魂だ。鴨絲巻、鶏絲巻、それに素巻圏はどれも人気である。必ず揚げたてを買って食べるように。それでこそいちばんの味わいが保証できるのだ。
/杜称奇小喫店/
この店には天津における民間の各種小喫(軽食やおかしなど)が集まっている。なかでもいちばん有名なのは牛肉焼餅だ。豆沙火焼にはさらに餡がたっぷりと詰まっていて、素晴らしいと言うに値する一品だ。ほかにも、黒米椰蓉、小麻醤、奶油小酥餅なども外せない。
西湖道の正しい紐解き方は食べ歩きだ。どこか長い列ができているお店があれば後ろについて並んでみる。これこそグルメ探しの秘訣である。
滨海図書館で本の香りをかぐ
滨海図書館は滨海新区に位置し、市街地からはおよそ50キロほど離れている。少し遠いが、入口には開館以来ほぼ毎日長蛇の列ができている。
この図書館の最大の特徴は、外からも覗くことができる眼玉のような形の物体である。館中央に位置するこの球体は「滨海の眼」といい、外の部分がLEDスクリーンになっている。図書館を建設する際、建築士はまずこの球体を図書館の中に嵌め込んだあとで、それを囲むようにして洞窟のような中央ホールスペースを作り上げたのだ。
建築と写真が好きな人々にとって、滨海図書館は足を運ぶのにうってつけの場所だ。というのも、このようなデザイン感ある図書館は滅多に目にすることができないからだ。館内の蔵書は多く、雰囲気も読書をするにはとてもいいので、本好きの人々にとっても悪くないチョイスだ。
茶館に座って相声を聞く
相声(日本の漫才に似ている)は言葉を用いた天津の芸術表現である。しかし天津では一種の生活方式と言ったほうがよりふさわしいかもしれない。相声茶館は天津文化の真髄を見ることができる場所だと言ってもいい。相声を聞くことができる茶館は、大きなものも小さなものもひっくるめて、天津全体で20から30店ほどある。比較的有名なのは「名流茶館」だ。ここに掛かっている横額は著名な相声役者である馬三立師匠が書いたものだ。茶館を訪れ、急須一杯のお茶とお茶請けの瓜子(炒って味付けした瓜類の種)を頼む。そしておどけた相声の声を聞きながら過ごすと、午後の時間はあっという間に溶けていってしまうのだ。
本場の天津料理を味わってみる
本場の天津料理を味わってみたいのなら、耳朵眼会館か津菜典藏に行ってみるといいだろう。どちらも中国の黒真珠グルメガイドにリストアップされている、正真正銘の天津料理屋であり、味の確かさは現地の天津人の検証済みである。
耳朵眼会館は品質が確かで値段も手頃な百年の老舗である。このお店の看板メニューは爆肚冷菜で、その作り方は北京の伝統的な作り方とは違い、火加減の調節がより厳しく求められる。渤海湾のエビは肉が豊満で、しっかりと煮込んだ紅焼牛尾には味が染みており、箸でつまむだけで骨から肉が剥がれるぐらいだ。ほかにも、耳朵眼は小喫の味も本物だ。とくにここの炸糕は伝奇と言ってもいいくらいで、何度食べても飽きないと現地の人々は口を揃える。
津菜典藏の看板料理は罾蹦鯉魚と津味油条である。また老爆三と魚香肉絲、宮保鶏丁、木須肉は天津四大家庭料理と称されるものであり、試してみる価値ありだ。
夜、海河のほとりを散歩する
海河は天津の母なる河であり、賑わう天津の市街地を三岔口から大光明橋まで横切って流れている。クルーズのチケットを買って、海河公園、望海楼教堂を経ながら夜の海河を楽しんでみよう。また、川沿いの「老龍頭火車站」(天津駅)の両側に延びる建物を見ながら風に吹かれるのもとても心地よい。ほかにも体験してみる価値ありなのは「天津眼」である。世界で唯一、橋の上に作られた観覧車として「天津眼」は天津の著名な代名詞となる風景である。夜の帳が降りる頃に乗ると、美しい海河の夜景を上から眺めることができる。
—「嬉游」より