中国雲南省大理に移住して3年、のんびりとした日常とお気に入りのお店紹介

私が大理に定住してからもう3年になる。山の麓の村の生活は静かでのんびりとしている。仕事用デスクの前には窓があるのだが、その外には青々と茂ったユーカリ・ロブスタの木と竹が見える。私はここでひと月の半分を座って過ごす。パソコンに向かいながら写真と気持ちを整理し、雲や風が流れてそよぐ瞬間に青い山の四季の変化を見るのだ。

ときには家での仕事が長くなる。そういうとき私は新しい刺激を求め、太陽の光と一緒にモーターバイクに跨り、大理の地域社会に「面白いもの」と「人気」を探す。

山林草木 Woods&Weeds

バー「山林草木」は大理の古い街並みにぴったりと溶け込んでいる。

ここを初めて訪れたときは夜だった。知らない路地をゆっくり歩いていると、黄色がかったオレンジと木々の影が交錯していて、まるで上海の古い街並みにいるかのようだった。角を曲がると、いかにも物語に満ちていそうな洋風の小さな建物が、控えめながらも部屋から漏れ出た一筋の光と共に目の前に現れた。「山林草木」である。

「今年は青じそをたくさん植えたから、それでスペシャルブレンドを作ってもいいわね。最近気づいたんだけど、大理って不思議なところね、だってゴボウを植えている人がいるのよ。香ばしく焼いたゴボウをジンに漬けて、その上に新鮮な青じそを乗せると、ゴボウと青じそから独特の大地の草木の香りがわっと広がるの。造化の神秘というか、山林の楽しみよね」。そう語るマスターの暁霁はよくウィーチャットのモーメンツに店の全ての草木の情報をシェアしている。

3年前、彼女は15年過ごした北京から大理に越してきて、月牙塘路地で3階建ての小さな建物を借りた。彼女は屋上にハーブを植え、猫のアミーゴと犬の大宝と一緒に2階の部屋に住んでいる。バーは1階だ。

山林草木を訪れる客のなかには大理の地域社会の常連が少なくない。ときには2、30人の客で店内が賑わうこともあるが、今晩はとても静かだ。空気も1週間降り続いた雨で澄み切っている。私はカウンターに座って、マスターが酒を作る様子を眺める。すべてがゆっくりとしていて静かだ。

私はこの店の想像力溢れるドリンクメニューが好きだ。「老蒼山」、「氷山」、「ウイスキーおじさん」、「トルネード」……もちろん、季節の果物やハーブを使ったスペシャルカクテル、それにアイスクリームも毎日出され、夜に美しさを添えている。

住所:大理市大理古城月牙塘

営業時間:19時-00:00(月曜・火曜は店休日)

秋山珈琲

古い町並みでお気に入りなのは秋山に行ってDirty溶岩コーヒーを飲むことだ。

この店ができた最初の頃、天津人である店主の壮壮はいつも変わらず余計な話をせずにコーヒーを淹れ、淹れ終わると太陽の下に行って煙草を吸っていた。葉楡路の午後、木々の葉から陽光が零れ落ちる。きれいなモーターバイクに乗った人々が威勢よく通り過ぎる様子もよく見かける。

ずっと前のモーメンツを振り返ってみると、ある人がこう書いていた。「僕らが幼い頃、大人たちは僕らを捕まえて夢を語らせるのが好きだった。たとえば、おまえは将来何をしたいんだとか、そういうやつである。僕らはたいてい、科学者になりたいとか、いや医者だとか、やっぱり教師がいいとか、お父さんお母さんになるんだとか、とくに考えもなしに社会に役立つ人間になりたいと答えた。その後、だんだん成長し、結局あのときの約束は果たせなかった。だけど、これまでの経験の中で僕らはだんだんと自分自身を作ってきた。ある者は店を開き、ある者は皮製品の職人になった。バリスタやアンティークの買い付け人だっている」。

まさに彼が言う通り、この店はその「3人」が集まってできた店である。店には秋山が作った皮製品に、各地から買い漁ってきた古着や装飾品、そしてぴかぴかに磨かれたコーヒーマシンと食器がある。入り口には常に誰かが座っている。どれもコーヒーを飲みに来た、大理に長く滞在している人間である。

今年、壮壮に換わって小湯が店の主人を務めることになった。彼は奥さんと一緒に山の上で米酒を造っているが、山の下に降りて今度はコーヒーを作るわけだ。

「カップが好きなんだよ。だからお客さんが自分のカップを持ってきさえすれば、コーヒーを3元安くしてあげるんだ。ほら、これが僕と奥さんのカップさ」。「ほんとうにロマンチックだね」。私は彼らのイラストが描かれたおそろいのマグカップを眺めながら、そう言った。

住所:大理市葉楡路111号

営業時間:水曜日から月曜日10:00-19:00(火曜日は定休日)

朴石ベーキング

朴石ベーキングの主人は私の隣村の仲良しであるRioとLockyだ。Rioはむかし

「江南布衣」でデザインナーをしていて、恋に堕ちた後、大理に来た。村にあった石造りの建物を修理して、服作りを続けている。Lockyの大理暮らしはもっと長く、ここでずっと野外活動のガイドをしてきた。そして、ほかの2人の友達と一緒にこの敷地を借りて「科学の家」と名付けた。

「ことの始まりは、不細工だけど可愛い土の竈だったんだ」。Lockyは庭で土と藁を使って土の竈を修理した。そして、ある程度の時間を置いて、友達を呼び、焚き木で焼いたピザを振舞った。ほかにも竈は毎日のパン作りにも使われた。

LockyとRioはパン作りにちょうどいい微酸度まで追及した。サワードウブレッド作りは病み付きになる趣味なのだ。自分たちで食べる以外にも、彼らはよく周りの友達にもパンを分けて、味を見てもらった。長い時間が過ぎ、彼らのパンを好きな友達たちはますます増えた。そして、みんなの励ましもあって、Rioは店を開いてみることにした。

彼らに言わせれば、パン作りで最も重要なのは「古めかしくて素朴な発酵方法」で、これに越したものはない。――天然酵母発酵と、麦本来の味や香りをいちばん保てる「石臼引き全粒粉」――こうして「朴石ベーキング」の名が誕生した。いつも大自然と共に過ごしているふたりは、店を開くにあたって掲げた理念――できるだけ使い捨てのプラスチック製品を使用しない、現地の旬の食材をふんだんに使う――についても図らずも一致した。店舗の装飾はふたりで自ら行い、改装にあたって廃棄された壊家具は庭で解体して木材にした。ふたりの考えは最後まで創造的でよく考えられたものだった。

材料の選定にあたって、朴石ベーキングは自らの理解とこだわりをもっている。つまり、現地の食材とヨーロッパ式のパンとの結合に挑戦するということである。実際、たとえば現在すでに朴石ベーキングの定番となっているシャングリラ農家の自家製粉生態小麦、洱源黒ニンニク、諾鄧岩塩、蒼山山の泉水など、雲南本土のたくさんの優れた食材はパン作りにぴったりなのだ。

住所:大理市弘聖路19-31号

営業時間:火曜日から日曜日の10:00-18:00(月曜日は定休日)

静物糧油店

大理大学前の弘聖路には、朴石ベーキングのほかにもいくつか私のお気に入りの場所がある。なかでも「静物糧油店」は紹介しないわけにはいかない。ここのオーナーは九零後(90年代生まれの中国の若者のこと)のカップルだ。彼らの開店の初志はシンプルだ。「一言で言えば、何かしようとしたときに、私は果物が好きだから、じゃあ果物を売ろう、って」。

店内では新鮮な果物と野菜、それに米や塩、油などの生活必需品が売られている。これらはすべて店主が大理で長期提携している数件の農場から毎日送られてくるものだ。赤いトマトやニンジン、黄色いパッションフルーツ、レモン、カボチャ、緑のゴーヤ、インゲンマメ、それに白ナス。種類は多くないが、念入りに品定めされたうえで入荷されていることが一目でわかる。どれも新鮮でつやつやだ。

9時過ぎに開店すると、店内に満ちた野菜や果物の香りが辺り一帯へと漂い始める。ベビーカーを押すお母さんが来店し、米を一袋抱えて行く。ドキュメンタリー作品の監督は緑豆で作ったケーキをいくつか買っていく。附近の食堂の主人が野菜を一抱え買い求め、手に下げて帰っていく。オーナーの大熊はいつも彼の旧式のサンタナを運転して商品を届け、ときには遠くの農場まで行ってリンゴやナシの木の成長状況を見学したりする。

住所:大理市大理大学北門そば

営業時間:10:00-19:00

三内 擀麵団的地児(生地打つところ)

静物糧油店の隣に立つのは三内のクロワッサン工房だ。10平方メートルしかないここは、クロワッサンしか作らない。「クロワッサンは作りにくいし、思った通りに作るのは難しい。だから、うまく作りたいと思うんだよ」。大理にはシンプルで粘り強い人がたくさんいるのだ。

上海と深センで長年バリスタをしていた三内は今年、大理に越してきた後、本格的にクロワッサンの研究を始めた。月曜、水曜、そして土日、彼は厨房でしっかりとしたクロワッサンを作る。味はプレーンのほかに、杏仁、ハムなど5種類ある。厨房に立たない日には、彼は家族と共に過ごすか、ふと思い立って新しい味のクロワッサンを試している。

透明なガラスの上には、小さな女の子のイラストと「重帰于好」(新たにやり直して仲直りする)という文字が貼ってある。三内が言うには、この四文字は人と自然、人と人との関係を新しく作り上げたいという彼の考えを表しているそうだ。このような初心も彼が物事を処理していく中で絶え間なくインスピレーションや啓示を与えてくれる。毎朝6時、三内は店に来て、生地を準備する。2時間発酵させた後でオーブンに入れ、1日で40個前後のクロワッサンを作る。午前11時には、彼は自転車に乗って早々と家に帰る。

住所:大理市大理大学北門

営業時間:10:00-19:00



筆者:雨潇

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