温州は、中国浙江省の最南端に位置し、三方を山に囲まれ、もう一方は東海に面している。80、90年代には、多くの中国人にとって、温州は「富裕」の代名詞だった。過去三、四十年で、温州の人々はボタン1つ、万年筆1本、革靴1足、あるいは一軒のレストランで、世界の扉を叩き、ビジネスを世界中に展開した。五千年の歴史と文化、六百里にわたる美しい山水が、温州人を豊かな生活、美食、革新へと駆り立てた。中国人の「落ち着かない」ランキングでは、温州人は常に上位にいる。温州の小吃(軽食)の中で、その大胆なスタイルが余すところなく際立っている。
温州人の糯叽叽への愛は誰が超えられるか
「糯叽叽」とは、中国のネットスラングで、非常に柔らかく、しっとりとした食べ物を指している。温州人の一日は、糯米飯(おこわ)から始まる。普通のもち米とは異なり、温州の糯米飯はさまざまなバリエーションがある。通常、ボウルに盛られ、透明でキラキラとした白いご飯はしっかりとした食感があり、ザーサイ、肉のふりかけ、しいたけ、塩漬けの卵黄、そして砕いたサクサクのパンの油揚げを添えられ、一さじの塩味がちょうどよい肉のスープをかけて和える。最後に、豆乳の一杯を添えると、甘くてしょっぱい味わいになり、昔ながらの口当たりは人を引き込む。
灯盏糕は温州で最も典型的な屋台軽食で、中国古代の菜油灯に似ていることからその名前がつけられた。白い生地で豚のもも肉や白い大根の千切りなどの具材を包み、熱い油に入れると、ぱりぱりとした音が立ち、瞬く間に手のひらぐらいの大きさの灯盏糕に膨らむ。一口かじると、外側はサクサク、丸い端はサクッと柔らかく、中の具材もぎっしりと詰まっている。
「粽子(ちまき)街」と呼ばれる個性豊かな通りは、温州の人々にとって非常に重要な存在である。この通りには数軒の粽子店が軒を連ね、どの店も老舗ばかりであって、煮立てた粽子は、かごにたくさん積まれ、その香りが玄関先に広がる。ここでは、黄身入りの粽子、豚肉の入った粽子、蜜のかかった粽子、蚕豆の入った粽子などさまざまな味の粽子を楽しむことができる。一日に一種類ずつ変えて食べても、長い間楽しめる。
温州は、隠れたシーフードの町
温州はシーフードの豊富な生産地であり、「浙江省第二の漁場」、「中国最大の水産物卸売市場」として知られている。長大な海岸線は広大な海域を描き出し、洞頭諸島、樂清湾、蒼南炎亭漁寮などがあり、これらの地域では、ホンニベ、ワタリガニ、シャコなど多種類のシーフードが入手できる。
温州の人々は毎日6.3万キロのシーフードを食べていると言われ、その中でトップ的な存在はホンニベである。温州の人々は、ホンニベへの愛情をさまざまなホンニベ料理に変え、魚丸がその中の一つ。名前に「丸」をつけているが、温州の魚丸は不規則な長方形である。魚肉は新鮮でしっとりとしていて、弾力があり、魚のスープを一口飲むとちょっとした米酢の酸味が食欲をそそる。
温州のあちこちに見られる伝統的な小店では、魚餅の美味しさが多くの人を虜にしている。滑らかで真っ白な魚餅は、骨を取り除く手間が要らない。簡単に醤油と酢をつけて食べると、お年寄りや子供まで安心して楽しむことができる。一口食べると、新鮮で腥臭さのない、口当たりの柔らかく噛み応えのある、海の風味が広がっていく。
粉麺は炭水化物の終結者
温州では、一杯の粉麺をすすることで、巷の生活を感じられる。温州の豚脏粉は柳州の螺蛳粉や長沙の臭豆腐と同様に、避ける人もいれば、特に好む人もいる。豚骨で煮込んだ濃厚なスープは透明で光沢があり、柔らかいホルモン、きめ細かい豚の血、なめらかな米粉を加わり、さらに咸味が効いた豆瓣辣酱を加えると、非常に美味しくなる。
錦粉麺(さつまいも粉と卵で作られた粉麺)は、温州の人々が特に好む主食の一つであり、淡い黄色と滑らかで繊細な質感が、錦の織物のようであることからその名を得た。手作りの皮は一枚一枚が透明で、均一な太さの麺条に切り分けられ、しっとりとしていながらさつまいもの特有の清香を帯びている。錦粉麺は茹でることも炒めることもでき、どちらも美味しい。
温州の麺をいえば、有名な清江三鮮麺は外せない。鍋から離れると、麺スープは濃厚な旨味を放ち、小黄魚の肉質は柔らかく、卵の中に生姜のみじん切りを混ぜ、生臭さを巧みに取り除きつつ、麺の味の豊かさを演出している。
寄稿者:ごちそうくんです