夢のような水郷と川を枕にしている家々

江南の印象は人それぞれだ。ある人は「小さな橋、流れる水、立ち並ぶ家々」を思い浮かべ、ある人にとっては「青黒い瓦に赤い壁、水に沿って走る路地」であり、またある人は「ライラックの花のような女の子」を想像する。そして実際、そのどれもが江南の古鎮のなかで探すことができるものなのだ。

周荘、それはまるで碧い玉

人々はみなこう言う。「上には天国があり、下には杭州蘇州があるが、その間には周荘があるのだ」と。周荘は水から成る街であり、その道も水から成っている。しっとりとうるおい、豊富な水をたたえている周荘にとって、水は魂なのだ。「水郷には路地が多い。人家はみな河を枕にしている」。そう言い表される周荘だが、もしこの素朴で古めかしくも美しい明清の住宅建築がなければ、ここの水の流れもありふれたものになるだろうし、もしここの水の流れが無限の生命力を持つものでなければ、ここの青瓦や白壁もただ地味なだけであろう。秋になると、周荘の水はひときわ暖かく、そして穏やかになる。烏蓬船が川を漕ぎ進むと、軽くかき分けられた水が両岸へと向かい、水面に映る風景がゆっくりとぼやけていく。その様子はさながら覚めゆく夢のようである。

豊かな土地、同里

同里鎮は蘇州市街から車でわずか半時間ばかりの距離にある。ここを流れる15の小川は古鎮全体を7つの小島に分けており、それを49の古い橋が繋ぎ、再び一つにしている。小島のひとつひとつが寄り添いあい、似た者同士仲良く収まっているここは「東洋の小ベニス」という別称を持つ。まさに江南の古鎮とも言うべき「小さな橋、流れる水、立ち並ぶ家々」の詩意画情は、リュックを背負って訪れ、ぶらぶらしてみる価値ありだ。

同里の秋は素朴に染みる。早朝、明清街だろうとあるいは三橋だろうとどこもかしこも一層の薄いレースを被せたようにぼんやりとして見える。その様子を遠くから眺めると、まるで時空を超えて古代にタイムスリップしてしまったかのように感じる。そんな霧のレースと夢心地がここにはある。

風情ある甪直

2500年の文明史を有するここは、五湖の水際である神州水郷の筆頭に挙げられる。他の古鎮と比べると、ここは才気に溢れている。古橋、老街、古民家、そして1300年あまりの歴史ある古いイチョウの木に、見る者は感嘆してやまない。また、甪直の小さな橋の下を流れる水は優秀な文化学者を育んだ。

その土地の風土がその土地の人間を育てるものだ。甪直の農村の婦女たちは昔からずっと髪をたきふさに結い、包頭巾を被る。複数の素材や色彩からなる衣服を着て、袴のようなスカートを履き、刺繍の入った靴を履く。その古めかしく素朴な生活の息吹はきっとあなたの胸を打つはずだ。秋に訪れ、石作りのベンチに静かに腰を下ろし、ここの人々が行き交う様子を眺めてみよう。きっと本当のゆとりある暮らしとは何かを体感することができるはずだ。

水の街、烏鎮

烏鎮は人びとにあこがれを抱かせる場所である。ただその名を聞いただけで、青黒い瓦と小さな橋の下を流れる水、そして川に沿って並ぶ家々が脳裏に思い浮かぶ。そんな暖かな美しさとすがすがしさがここにはある。写真を見ただけで心が動いでしまうはずだ。ここは河から街が成り、橋と橋が街を繋ぎ、建物は川に沿って立ち並んでいる。水鎮が一体となっており、その印象は非常に優しいものだ。石板の小橋や、ひっそりとした路地、雨水の波紋……烏鎮の路地をぶらぶらすると、生活の平淡さと安らかさが感じ取れる。きっとあなたの心にもよい休暇となるはずだ。

財に富む南浔

南浔は寂しさに耐えることができる古鎮だ。周荘にはかつて陳逸飛に描かれた、アーチ部分の丸と角ばった欄干から成る方円双橋があり、甪直には葉聖陶が書いた老舗の米卸売業者である万盛米行があり、烏鎮には茅盾が筆を執った小説の舞台である林家舗子がある。そして南浔は彼女の濃厚な文化の沈澱を寡黙に守り続けている。恨みつらみを口にせず、真に彼女を理解できる旅人たちがやってくるのを待っているのだ。ところで、小蓮庄に行ってみるのをお忘れなく。ここは当時の土豪が居住していた場所であり、さらには江南の庭園らしく、歩を進めるごとに違った風景を目にすることができる場所だ。その美しさは人々の目を釘付けにしまう。

まるで夢の世界、西塘

 西塘は最も賑やかな古鎮である。遠くからこの水郷を望むと、墨汁のような色をした瓦を頂く白壁、水面に写る船の影とさざ波の煌きが、薄い霧を通してぼんやりと滲んで見える。それはあたかも淡い色合いで描かれた宣紙画のようである。古鎮に入ると、蒼然とした河に沿って走る屋根付きの渡り廊下と静まり返った路地があなたを待ち構えている。まるで遥かなる歴史のなかに入り込んだようだ。煙雨が降るなか、長廊を進み、ぽつぽつという雨の音を聴きながら、昔のロマンを探し求めてみよう。また、夜の西塘は必見だ。川岸の古い建物に吊るされた赤提灯が西塘古鎮を輝き照らしている。

風水に優れた木涜

木涜は霊気に満ちたところである。ここは2500年あまりの歴史ある水郷文化を有する古鎮で、蘇州古城と「年齢」を同じくする。彼女の美しさは蘇州と同じく天下一であり、古くから呉第一の町、江南一の美しさと褒め讃えられてきた。木涜古鎮の天平山は著名な紅葉狩りの聖地であり、毎年秋がやってくると、紅葉が山全体を覆う。その赤さは燃え盛る炎であり、夕霞であり、海底に輝くサンゴである。そのあまりの美しさに高まる感情を抑えきれないはずだ。

文化が香る千灯

千灯古鎮には明・清時代の7つの拱形環龍石橋があり、古鎮を流れる千灯浦のうえにそれぞれ架かっている。夏には涼をとり、秋には落葉を眺め、冬は雪見をする……どの季節にもそれぞれ適したここでの過ごし方がある。もしここをタイミングよく訪れたなら、現地のお祭りと市に参加することができる。この時期が来るたび、小さな町は異常な盛り上がりを迎えるのだ。

多くの人が江南の古鎮に憧れを抱いている。そこでは白壁・黒瓦の古建築と世の移り変わりが刻まれた容貌が互いにぎゅっと寄り添っている。大きさも形もまちまちな屋根は、そのそれぞれが古鎮で起こった物語の1ページであり、じっくりと味わうべきものだ。古い船に乗って千年の古橋を潜り、百年の古民家を過ぎると、穏やかに過ぎていく生活の大切さがしみじみと感じられることだろう。

寄稿者:旅の楽

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